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塔を見上げて

焼き物を軸に、場づくり、まちづくりの発信源に。
FEATURE
KAZUYA HANAYAMA (YAMA NO HANA) / 花山 和也(山の花)

焼き物を軸に、場づくり、
まちづくりの発信源に。

UPDATE 2020.11.19
COLLABORATOR INTERVIEW
TEXT : AI FUJITA(futatema)
地元名古屋から多治見に移住し、
陶芸にまつわる活動を幅広く展開する新町ビル代表の花山氏。
そんな彼に、活動の原点、THE TOWER HOTELに納めたアイテムの制作意図、
そして今後の展望を伺った。

― もともとは、全く違うお仕事をされていたとか。陶芸の世界に足を踏み入れたきっかけは何だったんですか?

花山 : 地元で仲の良い先輩が多治見で陶芸をしていて、工房へ遊びに行ったのがきっかけでした。「僕も手伝いましょうか」なんて、何気ない一言から始まって。最初に任せていただいたのは、マグカップの取っ手をつくる仕事。それまでは全く陶芸に触れたことがなかったんですが、取っ手に土をつけるという単純な作業でさえも、本当に楽しくて。時間が過ぎるのがあっという間で、「こんなに楽しいことが、仕事と呼べるんだ」って、衝撃を受けましたね。
ちょうど自分は仕事を辞めていて、先輩も人手が足りなかったので、自然な流れでアシスタントをさせてもらうことになりました。そのタイミングで、多治見に引っ越すことにしたんです。

― なるほど、陶芸との出会いはある意味偶然だったんですね。そのあと現在の「山の花」運営に至るまで、計画的に進められたんでしょうか?

花山 : これも人とのご縁が大きいですね。多治見に引越してから、多治見に住む陶芸家たちと仲良くなって、多治見で陶磁器のデザインから販売までを行う3RD CERAMICSを立ち上げることになりました。当時20代だった同い年の3人で、今まで触れてきた陶芸の伝統を守りつつ、でも最高にかっこいいものをつくろう、って。自分は仲間のつくってくれた作品を知ってもらうため、接客、販売、マネジメントを担当しました。はじめは試行錯誤することばかりでしたが、次第にメディアやお店などから声をかけていただく機会が増えて嬉しかったですね。
こうした活動を広げていく中で、自分の中で「販売の拠点となる場所を持ちたい」という気持ちが強くなって。そんな僕のやりたいことを詰め込んだのが、新町ビルで営む器のセレクトショップ「山の花」です。今は器の展示・販売がメインですが、これからは新町ビルに来たくなるような企画をどんどん仕掛けていきたいですね。トークショーや音楽イベントなど、器を軸に多治見を盛り上げていきたいな、と。

― 人との出会いをきっかけに、どんどん陶芸にのめり込んでいかれたんですね。花山さんに、特に強い影響を与えた方はいらっしゃるんですか?

花山 : 同じ「新町ビル」の4階でお店を借りている、水野さんですね。何か新しいお店を出すときって、普通は条件に合った場所を探すじゃないですか。でも、僕の場合は逆だったんです。新町ビルに出会って、「ここを自分の新たな拠点にしたい」と思って。大概の人は「もっと違う物件を探した方がいい」って反対したんですけど、水野さんだけは応援してくれたんですよね。「いいじゃん、借りちゃいなよ!」って(笑)受賞したビジネスコンテストの存在を教えてくれたのも彼でしたし、プランニングやデザインの相談にも乗っていただいて。彼がいなかったら、今の僕はいないですね。

― 今回、THE TOWER HOTELにどのように関わられたかを聞かせてください。

花山 : マグカップとレセプションのカード立てを担当させていただきました。元々は既製品を探していたそうなんですが、イメージに合うものがなくて、僕にオーダーをいただいたんです。このタイミングでの依頼は僕以上に最適解を出せる人はいないと思いましたし、だからこそやりがいがありましたね。

― 制作にあたって意識されたことは?

花山 : 「綺麗にまとめすぎないこと」ですね。THE TOWER HOTEL自体コンクリートがむき出しの状態で、昔ながらの鉄骨が残っている。だからこそ、ただ綺麗でスタイリッシュなものをつくるのではなく、「もともとあった古いものを活かして、センスを感じられるものを目指そう」と決めました。
そもそも焼き物の特性上、どうしても焼きムラができてしまったり、崩れてしまったりします。金属やプラスチックを使用した方が、シンプルに整った物がつくれますよね。そこであえて、焼き物を扱う僕に声をかけていただいた。この想いを、最大限汲み取って作品に反映したいと思ったんですね。

― 花山さんにとって、陶芸とは、焼き物とは何ですか?

花山 : シンプルに、「好きなもの」ですね。焼き物って、知れば知るほど奥が深くて。縄文土器を始まりとすると、デザインよりも歴史が長いんですよ。それが世界各地で途絶えることなく続いていて、知れば知るほどに知らないことに気づく、広い海みたいな存在ですね。
それにこうして生きている今も、作家さんたちが新たな作品を生み出して、歴史が更新され続けている。飽きる暇なんてないし、一生学び続けていると思いますね。自分が関わることで、一人でも多くの方に焼き物を好きになってほしいですし、心が動く体験をつくれたらなって思います。

― テレビ塔との思い出があればお教えください。

花山 : 地元が名古屋なので、子どもの頃に家族で遊びに行った記憶が強いですね。おばあちゃんとテレビ塔に登って交わした、「夕日が綺麗だね」って会話は特に鮮明に覚えています。
僕自身、場所自体には深い意味はないと思っていて。
それよりも、その場所で生まれる物語にこそ、価値があるのかなと。昔僕とおばあちゃんが夕日に感動したのと同じように、ホテルに泊まった新婚のカップルが朝日に感動してくれたら、今回ディレクションに関わった僕としても、嬉しいことだなって思います。

― 名古屋と多治見。今後どんな関係を築いけると思いますか?

花山 : 多治見の焼き物は、名古屋という存在がなければ成立しないと思っていて。「産地である多治見と、消費地である名古屋」の絶妙な関係性ってあると思うんです。
名古屋にいた頃から、自分のお店を持っている人、デザインをやっている人、写真を撮る人・・・たくさんのかっこいい先輩達を間近に見てきました。積み重ねてきたキャリアがあるし、世間からの評価も仕事のクオリティも高い。そんな人たちと、これからも良い刺激を与え合いたいですね。多治見を拠点にしている僕だからこそできることを発信して、もっともっと、色んなことを形にしていきたいと思います。

TEXT : AI FUJITA(futatema)

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