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NEWS:2025.06.01

豊田 工芸の奥に宿る美に触れる

 

♢Day trip schedule 10:30-19:30

〇小原和紙工芸館

〇小原和紙美術館

〇足助の街並み

〇三州足助屋敷

〇うなぎ釜めし ”蓬莱”

 

工芸においては、絵画も一義、図案も一義、素材も一義、枝術も一義であり、全てが整って初めて一つの作品となる。
つまり、工芸は全ての芸術的要素を含んだ総合芸術である。(藤井達吉, 小原和紙のふるさとHP)

 

10:30〜

「美しいものたち」と対峙する、深く長い時間を求める旅。
今回は豊田市へドライブです。

豊田市と言えば言わずと知れた「クルマのまち」であり、最新技術が集うイメージがあるかもしれません。

今回はそんな豊田市の中でも、もっともっと歴史と生活に根差した”工芸”を求めて小原地区、そして足助地区へと向かいます。

名古屋から瀬戸や多治見といった文化が集う地区を超え、自然豊かな山道を走り抜けた先に、小原地区はあります。

 

 

車から降りた瞬間から、さわやかで心地よい空気と風に癒されます。
緩やかな坂。桜が咲き、小川が流れ、美しい自然を体感する時間。

小原和紙工芸体験館は美しい景色の中に佇んでいます。

この美しい小原のまちに生まれ、育まれてきた和紙があります。

工芸体験館では、いくつかの体験を楽しむことができますが、今回は「葉紙漉き体験」を選択。

 

まずは原料(コウゾ繊維とトロロアオイを混ぜたもの)を簀桁へ流しいれる「流し漉き」による和紙作りを体験します。

そして、小原和紙工芸の魅力はここから。

色がついた原料を思うがままに和紙の上に流していきます。
色が重なると自然とグラデーションしていく様子も素敵ですね。

さらに紙でできたモチーフやもみじを静かに置き、上から原料を流すことで紙と同化させていきます。

後は乾燥させるだけ。

作業自体はとても簡単ですが、思った以上に楽しく、ワクワクする体験です。

 

さて、乾燥まで30分ほど時間があるので周囲を散策しましょう。

充実感を胸に、近くにある美術館を訪ねます。

 

ここでは小原和紙をつかった美しい作品たちと出会うことができます。

1階には小原和紙を使った工芸品
2階にはアーティストによる芸術品が並びます。

特に工芸品には驚きが多く、特に漆と掛け合わせたときの実用性、美しさにはわくわくすることばかりでした。

 

 

(※先日開催された 第56回 東海伝統工芸展において、小原和紙と漆を使った作品が日本工芸会賞に輝いています!)

 

12:45〜

小原地区から40分程度ドライブして足助地区へ。

この地区にある”香嵐渓”は東海屈指の紅葉スポットであり、秋には多くの観光客でにぎわう観光地。

ですが、実は道路を挟んだ”足助の街並み”は愛知県で初めての国の重要伝統的建造物群保存地区(通称:重伝建)に選定されています。

江戸時代から明治までの面影が残るこの街は、伊那街道(中馬街道)の重要な中継地でした。
塩がここで詰め替えられていたことから「足助塩」が有名です。

塗籠造りの町家。これもまた生活に根差した工芸です。
それだけでも美しいのですが、これらが立ち並ぶことで形成される街並みもまた美しい。

歩いていくと駄菓子屋や本屋などに出会い、思わず立ち寄ってしまいます。
この町に住む人たちの生活圏に溶け込んでいくようなこの感覚は、私がまさに”旅”していることに気づかせてくれます。

喫茶店で一休みしてみると、より一層深く深く旅を感じられるかもしれません。

街並みがずっと続いていくのでついつい歩きすぎてしまうかも。
そんな時に備えて足助八幡宮にご挨拶しておくとよいかもしれません。
足助八幡宮は読んで字のごとく、足を助ける神様として旅の安全を願う方々が多く訪れています。

 

 

13:50〜

香嵐渓を進んだ先にも日本の工芸を楽しめる場所があります。

”三州足助屋敷”
ここにはかつての豪農屋敷を再現した景色があります。
1歩入るとまるでタイムスリップしたような風景に驚き。

この地域で行われていた「炭焼き」「木地」「機織り」など、暮らしの“手仕事”が現在でも行われており、中には体験できるものもあります。まさに生きた民俗資料館ですね。

今回は藍染の体験を行います。

藍の葉を発酵・熟成させ、染料となる蒅(すくも)ができるまで3か月程度。
蒅を藍甕に入れ、灰汁や微生物による自然発酵を行うことで染料として使える藍液となります。(藍建て)

藍甕には神が宿るといわれており、藍染めを行う際にも感謝と敬意をもって扱う文化がありました。

藍甕に感謝し、敬意を払いながらハンカチを染めていきます。

輪ゴムやクリップなどをつかい、色を付けない場所を作っていきます。
私はハンカチを結ぶだけでどのような模様ができるのか試してみることに。。

藍液に漬け、手で繊維を広げながら藍色を繊維の奥まで染みこませていきます。
染め終わったら水で洗い、完成です!

 

 

思いがけずきれいな模様が出来上がりました。
もっと良くできそうな可能性を感じてしまい、もう一度やりたい欲がふつふつと湧いてきます。
感謝する態度を養いながら、いろいろ試したくなる奥深い世界でした。

豊田を後にする道中、私たちの生活を構成するものの美しさについて考えていました。
私たちの身の回りにはたくさんの美しいものがありますが、それらに人の姿が見えることで、より一層大切にしたくなる。
人の思いやこだわりを知ることで、より一層美しく感じることができると学びました。

豊田から向かった先は名古屋の元祖うなぎ釜めし”蓬莱”。
想定以上に道が混んでおり、到着時間に遅れそうだったため、念のため連絡を入れます。

すると”到着時間に合わせて食事を用意しておきます”とのこと。
通常、注文から提供まで30分以上かかるため、このようにご案内しているらしいのですが、これには思わず感動。

なんと気の利いたお心遣いでしょうか。
お店に到着する前からありがたい気持ちと、喜びで胸がいっぱいになります。

 

18:00~

名古屋へ戻り、充実した気持ちで訪れた”蓬莱”
趣のあるた佇まいに、期待が膨らみます。

到着すると女将さんが出迎えてくださいました。
ご案内いただいた座敷のお部屋は、なぜかほっとする、温かみのある空間でした。

お部屋につくなり、早速お食事をご提供いただきました。うなぎ釜めしです。

 

 

蓋を開けるとうなぎとたれの香りが広がり、食欲をそそります。

女将さんから食べ方のおすすめを伺い、
1回目:山椒
2回目:ネギとわさび
3回目:お出汁
4回目以降:お好みの食べ方で

とのこと。
お櫃に入ったご飯とは違い、釜めしなので釜の底についたおこげが絶品。とくにお出汁との相性が抜群でした。

当初はボリュームがしっかりあると思いましたが、食べ始めるとあっという間。
30分くらいで食べ終えてしまいました。

この空間を後にすることも惜しく、お酒や一品料理を頼みたくなる気持ちが沸き上がってきます。
それほど居心地の良い空間。おいしい料理。そしてなにより美しいお心遣い

家族や仲の良い友人と一緒に来たい、素晴らしいお店です。

 

旅を終えて

小原和紙、足助の街並み、藍染め、釜めしと体験を経て…ものの美しさとは人の心の美しさであるかもしれないと感じました。

小原和紙工芸を生み出した藤井達吉氏は「芸術作品は、作者の人間性、全人格が優劣を決めるのであって、技術ではない。」(小原和紙のふるさとHP)と説いています。
「使う人のため」を考え抜いた工芸は美しく「目の前の人のため」の心遣いは美しいのでしょう。

ものに宿る美しさをもっと知りたい、と思わせてくれる豊田の旅でした。

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