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EVENT:2020.12.02

「smokes in the clouds」5 artists exhibition

at 「on hold」
THE TOWER HOTEL NAGOYA 4F L01
2020.OCT.1-2021.JAN.3 / OPENING HOURS 12:00-17:00 [入場無料]

参加アーティスト:
WASHIO TOMOYUKI / HIROSHI SUGITO/
SHIN MORIKITA / HIRAKI SAWA / MASAO SHIRASAWA

タワーホテル内には多くのアート作品、デザイン、工芸作品が設置されています。
今回の展示では、5人のアーティストをピックアップし、
彼らがホテルのために制作した作品のための、準備ドローイングやオブジェを
ギャラリールーム「on hold」にて展示します。

アート作品は来場者の方にくつろいだ気分を与えるとともに、
明日のためのリフレッシュされたエネルギーを与えるものです。
ゆっくりとお過ごしください。


 イタリア・ルネサンスの画家アンドレア・マンテーニャに「聖セバスチャヌスの殉教」(ウィーン市美術史博物館)という絵がある。古代ローマ時代の聖セバスチャヌスは、広場の柱に縛られてローマ兵の矢に射抜かれて殉教する聖者だから、本来は痛々しい絵であるはずが、この聖者の頭上に、しかも抜けるような青空に浮かぶ雲の一つが、実は馬と人の姿になっている。もちろん、マンテーニャが注文主となる教会に黙っていたずらを仕込んだ、ということではなく、殉教した聖セバスチャヌスの魂を受け止めにやってきた、神の使い、といった、説明をしたのだろう。宗教画なので絵の細部にも意味があるはずで、せいぜい風景の一部でしかなかったような雲にまで意味を担わせた、と考えるべき、だろう。不定形な雲が凝縮して意味となっているのだ。 でも、美術作品における雲を探しにイタリアまで行く必要はないのかもしれない。日本の室町時代以降に多く作られた「洛中洛外図」を見れば、鳥瞰視で描かれた、都市京都の姿は雲によって見え隠れしていく。そこでは、雲は街や人を隠す、あるいは誤魔化す、のである。
もう一つ、ブリューゲルの有名な絵「バベルの塔」(ボイマンス美術館)にも雲が出てくることを紹介しておこう。天上の神の高さに近づこうとして、人間が作ったバベルの塔が、雲を突き抜けるほど高かったことを示すものだろう。ここで雲は形として意味をなすのではない。雲と建物の位置関係が意味を持つのだ。
このように、絵に描かれる雲は形としてはフワフワしているように見えて、形をしっかりと描き込む美術表現においても役に立つ。物質化してしまう彫刻表現では無理だが、絵の中では、その多くの場合、形のあるものと形のないもの、つまり、輪郭のあるものとないものが支えあう。形がなくてもそこには意味があるのだ。

1954年に国内で最初に作られた名古屋のテレビ塔の高さはせいぜい(あるいは、なんと)180メートル。雲を突き抜けている姿は、頭の中で想像できるものの、雲そのものがテレビ塔に直接かかることはない。現実には起こらないのだ。けれども、天空に伸び上がる垂直線を強調して、テレビ塔を映した写真には、その頭上に雲がしばしば映り込んでいて、その伸び上がる高さを、強調しているように見える。そして似合う。

逆V字型のテレビ塔の外観に似合うのが自然が作り出す雲と青い空だとすれば、その内部には「けむり」が似合う。「けむり」は人間が自らの手で作り出せる不定形なもの。ホテルのエントランスから、フロント、そしてロビー(シグネチャールームと呼ばれている)、そして客室に仕込まれている。エントランスを手がけた鷲尾はしばしば雲上を思わせる場所の設定でヴォリューム感のある人の姿を描く。
4階のホテルのフロントに設置されているのが、杉戸がタイルピースで作り上げた公園の風景。地上にみえるセントラルパークの公園とその周辺の風景には、水平線らしきものがなくフワフワとしている。両側に描かれた二つのビルは、水を吸い込んだスポンジのようにも見えないだろうか。杉戸が客室のために用意した油彩画には、果物のバスケットでありながらも、水が吹きだす噴水のイメージが共存する。彫刻は絵画のようにはフワフワ感を示すのが難しいが、ロビーに配置された森北の彫刻には、テレビ塔の構造を模した段階的な水平構造の連なりの中に、三日月がぶら下がる形で繰り返し登場して、中空感がでている。客室に置かれた森北の絵画ではテレビ塔の金属フレームを自由に動き回る伸びやかな人の動きを見せる。ロビーに配置されたさわのドローイングには、羽を閉じた鳥が繰り返し現れ、羽ばたきの風の動きと音を感じさせるスピーカーホーンが描かれて、鈴のように揺れ動いているかのようだ。ここにも先端が細くなるテレビ塔の形がかぶる。テレビ塔が揺れ動いて、音を出しているかのような感覚になる。映像も含めた、彼の多くの作品が、レストランの中に、平面から立体へ、そして映像へと形を変えて展示されている。白澤が客室内で、テキスタイルや紙で展開する、楕円をベースにした文字や形では、重力そのものが揺れ動いているようにも見える。

展示室のガラス窓から見える地上の公園の風景は極めて人工的なものだが、その先には必ず青空と雲が浮かぶ。二つのテーブルに貼り付けられた写真は、設営も含めたテレビ塔の過去を示す貴重な記録だが、骨組みの直線が強いせいもあり、角度を変えると上下が分かりにくく、水平と垂直軸が曖昧になる。一部に杉戸がモザイクタイルレリーフで参照した写真が含まれる。

金沢とロンドンを拠点とするさわは名古屋に一月近く滞在しての充実した制作となった。今回、この展示に参加したアーティストたちが名古屋や愛知には少なからぬ関係があることもあり、小さな時からの、テレビ塔を含む街の思い出を、心や記憶の引き出しから引っ張り出してきた。テレビ塔の中や、自らのアトリエに戻っての制作で感じていたものが、形になり、あるいは形までは行かなかったり、形にはなったけれど他の形にかぶりあったりしている。客室の作品は残り続け、今回の展示室の作品は、少しの間だけ、「けむり」のようにして、あるいは雲のようにして、少しの間だけ(on hold)留まる。

もちろん、このホテルにはけむりの部屋がある。

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