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HIROKO WATANABE

ROOM NO.L12
ROOM NO.L12

HIROKO WATANABE / 渡部裕子

PROFILE

(わたなべひろこ) 名古屋市在住。書家。一字書を主軸とした芸術としての書道表現はもちろん、金シャチ横丁等の商業書道、ボストン、パリのJapanFES出演の立体書パフォーマンス、郡上八幡城や西尾城の御城印揮毫など幅広く活動。フランスやニューヨーク、名古屋城本丸御殿等で個展開催。ArtExpoNY、Art-Athina招聘。そぎ落とされた美と余白の饒舌さに生命感を与えるべく表現を続けている。アジア創造美術展金賞・大賞受賞。Japanese Arts Selection in the LES、NYC特別賞。南オーストラリア州立美術館に立体書11点収蔵(2014年)。
hirokowatanabe-sho.com

COMMENT

■「風」縦850mm横2400mm幅50mm
テレビ塔の足元にある石碑「蕉風発祥之地」。「蕉風」とは、松尾芭蕉と名古屋の青年俳人により確立された俳句の作風のことであり、この地は芭蕉開眼の書=句集「冬の日」と共に蕉風を確立したとも言われている。この場合の「風」は慣習の意であるが、威風、旋風、波風、追い風、向かい風等々、自然現象によっておこる空気の流れひとつから、多様な捉え方をする日本人の、なんと複雑で単純なことよ。いま、鑑賞により湧き出た主観や情感は、すべてあなたの中に在ったものであり、すべて無かったものである。時は永遠の旅人であり人生は旅そのものである、と詠んだ芭蕉。気品高い芸術を目指した漂泊の俳人と共に、いま此処に実際に存在していることを風と共に感じ、生きている幸せを、自由に思いを巡らせることができる幸せを感じていただきたい。
■四連作「花鳥諷詠」縦220mm横900mm幅50mm
「花鳥」は自然、「諷詠」は詩を作ったり吟じたりすることだが、「花鳥諷詠」はそれ以上に大きな意味を持つ。何度も自然と向き合い、心の底から理解し合うと、花や鳥と感じあえるようになる。高浜虚子曰はく「春夏秋冬四時の移り変りによって起る自然界の現象、並にそれに伴う人事界の現象を諷詠するの謂(いい)であります」(虚子句集)。自然だけを詠まず、人の世の出来事を含む森羅万象を詠むのだと。この部屋から眼下を見下ろしたとき、樹々や花々から自然を感じると同時に、都市が持つ何かを制御するような強さをも感じてしまう。人類のこれからの生き方について、対峙する時ではなかろうか。
※両作品ともに 青墨・色墨(鈴鹿墨)、雲母、金箔、和紙